びん博士インタビュー(3)

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牛田:この大きい瓶はなんですか?


びん博士:これはトリスウイスキーっていって、寿屋が作った巨大な広告瓶です。昭和30年代になるとトリスバーには必ず置いてあるものでした。一時代流行したものですね。中身は入ってないですよ。これは広告用のものです。


牛田:広告用なのに瓶なのですね。


びん博士:そうです。無理して入れれば、10升は入ると思います。戦前の広告瓶は酒屋の店の屋根の上に針金でくくりつけてあったのですが、みんな10升入る瓶でした。

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牛田:あの巨大なシャンパン瓶も広告用ですか?


びん博士:そうです。店に置かれていたのですけど、もう店をたたむからと関係者の方が持って来てくれました。これはそんなに古くないですよ。

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牛田:これも全く不明です。


びん博士:これは今でも何に使われていたのかわからないのですよ。囲炉裏の下に置いてあったといいますが。口のところを手のひらでたたくと、よい音がしますから楽器に使えるかなと思ってもいます。


牛田:用途が全然わかりませんね。


びん博士:ちゃんと調べればわかるとは思うのですが、遊び心を持っていたいというのがあるのですよ。だから知りすぎてもつまらないかなって思ったり。いろいろと想像するのも面白いでしょ。瓶っていうと女性が好きそうなイメージがあると思うのですけど、意外とアウトローの危ない人が好きだっていうことがありましたよ(笑)。そんな人がこれを持ってきてくれたのですよ。この瓶は囲炉裏のなかからでてきたと聞いているのですが、おそらく実験用の熱を温存するとか冷却する装置のものではなかったかと思っています。


牛田:すごい大きな瓶もありますね。


びん博士:これは耐酸瓶ともいわれていて、染物工場では定着剤に使う酢酸の、そして養蚕農家では消毒用ホルマリンの容器として使用されたものです。


牛田:ラベルが完全なものとそうでないものがありますね。


びん博士:ラベルが完全なものは、分類しようと思って、今大整理しています。ラベルがないものの多くは、土から掘り出したものも多いですね。


牛田:どうして瓶に興味を持ったのですか?文化会議を一緒にやっている清水正先生がびん博士のこと知っていて、学生時代から瓶集めていたっていうのを伺ったことがあります。


びん博士:えっ本当ですか。あの頃はまだそんなに集めていなかったような。でも覚えてもらっているくらいだから、もう公に収集していたのですかね。清水先生はあの頃からドストエフスキー研究をしていましたけど、私はなんか世捨て人的存在でしたよ。悪くいえば、現実逃避。瓶集めて後はのたれ死にだ、みたいな考えでおりました。あの頃は画家の小山田二郎さんの家によく遊びに行っていたのですよ。その頃、小山田さんは突然、遠縁の娘さんとどこかへ失踪してしまっていて、奥さんとお嬢さんが家に残っていたのです。奥さんのチカエさんもお嬢さんもなんかすごい魅力のある人たちでね。彼女たちは多磨霊園の近くに住んでいたのです。よく夜中に多磨霊園に行って酒飲んだり踊ったりしていましたね。霊媒の真似事とかして遊んでいたのですよ。


牛田:いつ頃の話しですか?


びん博士:20代の後半ぐらいかな。小山田チカエさんのところに若い研究者の人たちがたまっていたのですよ。みんなとんがっていて、けんかっ早くて。そのなかに清水先生もおりました。友人の紹介で知り合ったのですが、「とにかく新進気鋭のドストエフスキー評論家だ」ということで面識を得たのでした。それと私には平成元年に32歳で他界した9歳違いの弟がいて、彼が日芸だったのですよ。それで日芸の文化祭でなにか歌ってくれって弟にたのまれたのですよ。弟のライブのときだと思います。その時に清水さんが校舎の窓から覗いてくれていたような気がします。とにかく小山田さんのところにきていた人は今でも活躍している人が多いです。チカエさんにはよく「あなたは芸術するべきよ」とか言われていたのに、瓶ばかりを集めていましたね。「なんで瓶なんか集めているのか、変な人だ」とよく罵られました(笑)。


牛田:収集とまではいかなくても、幼いときから瓶は好きだったのですか?


びん博士:生まれて初めて瓶を意識したのは、1960年代後半ぐらいの頃かな、20代後半ぐらいの頃私はよくあてどなく街をプラプラ歩いていたのですよ。丁度その時期っていうのは、日本全国が都市化しはじめたような時期で、地方文化は徐々に薄れて消えようとしていましたね。そんな頃、骨董屋などを覗いてまわっていたのですよ。

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