宗教学者・島田裕巳(2)

宗教学者・島田裕巳

「そもそも私は一体なにものなのか?」


―― 今日は島田先生の「書く」ことの核について、お話を聞かせて頂ければと思います。先生は本当にたくさんの本をお書きになっていますが、戯曲も書いていらっしゃったんですね?


島田 日本女子大を辞めて暇なころに、たまたまシアターTOPSという劇場の仕事が入ってきたんです。戯曲を書きませんか、って。まず、稽古期間がなくてもできる戯曲が条件だった。そして、『5人の帰れない男たち』という手紙劇を書きました。五人の男たちが手紙を読むんだけれど、「読む」わけだから、稽古がいらなくてすむし、セリフを覚えなくてすむ(笑)。


 今や人気者になった堺雅人さんが、当時「東京オレンジ」という劇団にいて、出てもらいましたし、あと、田山涼成さんにも出てもらいました.。そういえば彼は、二〇〇三年にドラマの『白い巨塔』で死んでしまう患者役をやっていましたね。当時は、僕も病気を患っていて、ドラマの中の彼が受けた検査と、たまたま同じ検査を受けたんですよ。だからそれがリアルに迫ってきた(笑)。あとは、妹の劇団にいた加藤忠可さんとか劇団ラッパ屋の木村靖司さん、有薗芳記さんなどに出てもらっています。自分で褒めるのもなんだけど、あれはなかなかよくできていた芝居でした。


 ちなみにその妹は日芸の演劇学科を出て、「劇団ショーマ」に入って制作をやり、今は独立してプロデューサーをやっているんですよ。


―― 戯曲を書かれているならば、依頼があれば、小説もお書きになりますか?


島田 未発表だけれど、すでにあります。『小説新潮』の人は気に入ってくれたけど、『新潮』の人が気に入ってくれなくて(笑)。それは、大学院生を主人公にしたお話です。冒頭が東大の三四郎池からはじまって、最後もそれで終わる。いわば、漱石に捧げた未発表作品ですね。

 
―― 本当に何でもお書きになるんですね。


島田 今でこそ、『公明党VS創価学会』みたいな本も書いているし、今日も、『週刊ポスト』の中吊りに私の名前が書いてありますが、これは部落差別について発言したものです。今は、芸術新聞社で刊行予定の『日本宗教美術史』というのを書いていますし、三修社で刊行予定の『慶応三田会』という本も書いています。


 こうやっていろいろ書きながら、自分の中ではいつも、「そもそも私は一体なにものなのか?」という意識はあります。本来の僕は、オウム真理教とか創価学会を扱う人ではないんじゃないかって思いも実はあるんです。でも、創価学会ものは売れるんですよ(笑)。それに、社会的な問題も見逃せないし。


 先に述べた『日本宗教美術史』は、五〇〇枚という制限つきなんですが、仏教が渡来する前だけで、二〇〇枚に及んでしまっているんです。ある編集者に相談したら、「全部で一七〇〇枚ぐらいになるでしょう」と言われてしまった。なかなか大変な作業だけれど、完成したら、なかなかのものになるという予感はあります。こんな仕事をしながら、自分の人生を軌道修正して、文化勲章でももらえるような人になりたいですね(笑)。

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