編集者・新井信(11)

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小説家になりたい人は編集者になるべきではない

山下 いろいろな作家の方に接していて、編集者である先生も、何か、例えば小説とか、書きたいという衝動にかられたことはあるんですか?

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新井 ないですね。僕の持論としては、小説家になりたい人は編集者になるべきではないと思いますけどね。編集者は、あくまで、黒子に徹することができるかどうか、ですからね。物を書く人は、編集者のそういう姿勢に敏感です。誠心誠意、作家のために尽くせるかが大切でしょう。
 作家の姿を傍で見ていると、とてもああはできないと思いますよ。ものを書くのは重労働ですから。作家の文章を読んでいると、より質のよいものを求めるようになるから、この程度の自分の文章で、もの書きにはとてもなれないと思いますよ。でもね、もの書きになりたいという意識のある編集者は確かにいます。作者の書いているものに対して、内心でライバル意識を持つのはまずいでしょうね。
 

性格の悪い人ほど本は売れる?

山下 編集者時代を通じて、もっとも屈辱的なことは何でしたか。

新井 編集者としては発言してはいけないことですが、自分を一人前の人間として扱ってくれない人も少しいましたよ。ものを書く人は、基本的に嫌な奴が多いと思いましたね(笑)。でもね、人柄が悪い人ほど、本が売れるというセオリーもあるんですよ。そういう人ほど、人間観察が鋭い! だから書いたものも面白い。大体において、売れてくると我がままになるのは自然でしょう。
それから、「俺の本が本屋にない」という人が多いんですけれど、ベストセラーならともかく、近所の小さな書店にあるわけないんですよね。そう言われるのを見越して、先生のお住まい近辺の書店に関しては、あらかじめ手配しておかないといけない。担当者の条件として、アフターケア、気配り、売り込み宣伝も必要なんですね。今は、TVタレントのような人以外、サイン会をやるといっても、人が集まらないんですが、集まらないと、編集者にとっては、著者にも書店にも、ものすごくストレスですよ。知りあいのサクラを総動員させたりしてね(笑)。

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