編集者・新井信(9)

arai_big.jpg

安部譲二『塀の中の懲りない面々』誕生秘話

新井 著者が本を出した後、セールスプロモーションのために、編集者はテレビ化、映画化を働きかけたり、サイン会や朗読会を書店でやったり、出版記念会を催すことがあります。この世話係りも編集者がやりますが、案内状を出したり、会場を設営したり、飲み物の手配をしたり、受付をしたり、やることはたくさんあります。付け加えれば、お葬式のお手伝いだってやります。
 安部譲二さんの原稿を読んだのは、直木賞作家神吉拓郎さんの仲介でした。二人は麻布中学の同窓です。エッセイスト山本夏彦さんの雑誌『室内』に連載していた『府中木工所の面々』を読んで、背中に冷たいものが走りました。面白い、これは売れるぞと。早速連絡を取って会いましたが、元のお職業を感じさせないほど、素直に私の注文を聞いてくれました。タイトルは相談して『塀の中の懲りない面々』としたんですが、120万部以上のミリオンセラーになりました。出版後、ホテルで出版記念会を開くことになったのですが、元のご職業の面々もお招きしなきゃならない。いろいろな組の幹部が来るので、トラブルは許されない。仕方がないから、その筋からも受付を1人出してもらったんですよ。今その人は新宿方面の親分になっているそうですけど。うちのシマからそちらのシマへトレードしたんだから、安部をくれぐれもよろしく頼むと言った当時の親分の挨拶が、カタギの来賓にくらべてもいちばんうまかったと、山本夏彦さんが後で感心していました。

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントする

(文化会議 にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

comment form