編集者・新井信 (2)

雑誌は、絶対的に編集長のもの
山下 文学研究をするにあたり、編集者というものの役割を最近考えます。編集者研究という分野はまだ確立されていませんが、今日、新井先生にお話を聞くことで、文学における編集者の存在というものをクローズアップできたら、と思います。
まずは、先生は『週刊文春』や『文藝春秋』などの雑誌の編集者もやっておられたということを聞きましたので雑誌編集の仕事についてお聞きしたいです。

新井 まず言っておきたいのは、雑誌というものは、絶対的に編集長のものなんです。雑誌の全性格を支配しているといってもいい。たとえ社長、役員といえども、その雑誌の編集内容には口を出せない。その代わり、雑誌の販売部数が伸びなければ、すべての責任は編集長にあるわけです。売上げがおもわしくないと、役員会ですぐ編集長更迭が話題にのぼるくらいです。編集長の一般的な任期は、およそ3年からよくて5年でしょうね。その間に実績を残さないと、次がないんですよ。雑誌の実権を握っている反面、その立場はきわめて厳しいものがありますね。
編集部員の数は、月刊『文藝春秋』だと12人くらい、『週刊文春』で50人くらいかな。『Number』だと20人くらい、『文学界』だと4、5人です。週刊誌などは外部からの契約編集者で足りない人員を補っています。
雑誌というのは、月刊誌と週刊誌に大きく分かれるけれども、なんといってもタイムリーな企画力が勝負なんです。その他に取材力や文章力も必要ですね。月刊誌でも、話題の中心人物を取り上げる場合は、ご本人は大抵文章が書けませんから、編集部員がその人の名前で記事をまとめます。最後に忘れてはいけないのは、肉体的にも精神的にもタフでなければならない、つまり体力です。
山下 月刊誌と週刊誌はどのように仕事が異なるのですか?
新井 月刊誌の場合は、編集長の情報力、時代感覚とセンス、それに伴う企画力、そしてタイトル力が大きいですね。雑誌に関しては、目次をどういう風に作るか、というのが最重要の問題です。編集長と補佐役であるデスクが中心となって、見開き目次右側の柱である目玉企画を決めます。目次左側の読み物的なものは、編集部員が手分けして当たります。
週刊誌のほうは競争が激しく、もっとも新鮮な話題で勝負しなければならないから、締切りギリギリまで特集企画のスタートを引き伸ばして待つことも多いですね。早くから動くとネタが腐ってしまうから、最後の1日に集中して取材に走るわけです。まあ、時間との競争ですからね。『週刊文春』や『週刊新潮』は編集部員が書き手と取材記者を兼ねていますが、『週刊現代』や『週刊ポスト』はデータ―マンという取材記者とアンカーという書き手は外部の契約者にやらせることが多いようです。
出版社系週刊誌で最初に出たのは『週刊新潮』ですが、初代編集長が掲げたテーマは「金」「女」「権力」の三つで、社会的事件を通じて文学をするのだと言ったそうですが、以後の出版社系週刊誌はその流れを受け継いでいるといってもいいかもしれないですね。
- 2007年02月20日
コメント