日本近代文学研究家・平岡敏夫 「坊っちゃん」誕生100年記念インタビュー(5)
『坊っちゃん』誕生100年目のうらなり
山下 坊っちゃん100年の今年、何冊か坊っちゃんについての本が出ましたね。

平岡 最近では、朝日新聞に『漢方流坊ちゃん』という本の広告が載っていましたよ。漱石は胃腸が悪くて、だからイライラしていたんだ、と。漢方で治したらもっと明るい『坊っちゃん』ができたんじゃないか、と。(笑)それから、ダイヤモンド社からは、『坊っちゃん物語』が出ています。坊っちゃんが現代の東京に出現したらどうなるか、という話です。
『坊っちゃん』100年ということで、いろんな物語が生まれてくるぐらい作品が有名なんですね。その中で、文壇的に言うと小林信彦さんの『うらなり』が出て、それを面白がっている人が多い。私はこれを読んで非常に不愉快になりました。今話したような問題が受け止められていないどころか、坊っちゃんを矮小化した、つまらない男に持っていって、それに喝采を送っているような文壇はいったいどうなっているんだ、と。それで、私は「うらなり」という詩を創ったんです。
『坊っちゃん』についていろいろ研究した木村直人さんも小林さんの『うらなり』を読んで憤慨していると言ってましたね。
山下 『うらなり』の創作自体は別に創作ですからどうでもいいんですが、「創作ノート」というものも書いてますよね。それがカチンときます。だいたい私は「創作ノート」というように自分の創作を説明しちゃうこと自体おかしいと思うんですが、中途半端な研究のようなことはしないでほしいなと思いました。参照した出典も明記していないのは、もはや害ですね。木村直人さんは『坊っちゃん』の本をたくさん出され、地道に研究に取り組んでおられる方ですから、憤慨するのは当然だと思います。
- 2007年01月29日
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