映画書籍編集者 高崎俊夫インタビュー(5)
(牛田)つっこみどころ満載で、コメディかと思われるぐらい観客の笑いが止まりませんでした。
(高崎)確かに、スケバンものとか『野良猫ロック(1970年代前半のシリーズ作品、長谷部安春・藤田敏八)』シリーズなんかは思わず笑ってしまうような場面はありますね。あの変なズレ方が70年代独特の味なのかもしれません。
(牛田)本の編集や映画の評論だけでなく、観客と最も身近な関係の劇場での企画というのは、面白いですね。
(高崎)映画の真の面白さを知るには、やはりビデオでなくて劇場体験が絶対、必要なんですよ。ラピュタ阿佐ヶ谷では、その前に田中登特集をレイトショーでやりましたが、やはり若い女性が目立ちましたね。代表作の『実録・阿部定(1975年)』なんて号泣している女性が何人も目に付きました。やはりスクリーンで見ると圧倒されてしまうんだと思いますね。十月には瀬川昌治監督の自伝の刊行に併せて「瀬川昌治の乾杯ごきげん映画術」という特集を組みます。瀬川さんは、一般には「列車」シリーズ、「旅行」シリーズで知られた喜劇の名匠として知られていますが、今回の特集では、メロドラマ、フィルム・ノワールと何でも撮れる、映画黄金期の職人監督の傑出した手腕が堪能できると思います。たとえば『乾杯!ごきげん野郎(1961年)』というミュージカル・コメディの傑作があります。ゲスト出演したエノケンがムチャクチャおかしいんですけど、そのアドリブ芸のディテールの凄さはスクリーンで見ないと味わえないんですね。三月には、ふたたびラピュタ阿佐ヶ谷で「田中登追悼特集上映」を行ないますが、こういう名画座と連動して、こうした、一見、あまり話題にされなくなった映画や映画監督を再評価するというのは、とても大事だと思うんです。よけいなお世話かもしれないけど、僕のような、それらの作品に深く恩恵を受けた世代が、若い世代に向けて、その魅力を伝えるのは、ある種の使命だと思っています。
(牛田)秘かに映画をプロデュースされたことがあると聞いたんですが。
(高崎)90年代の初頭に、僕は『AVストア(1989年、アスク講談社)』というビデオ業界誌の編集長をやっていたんですが、その時に、マキノ雅弘監督の傑作自伝『映画渡世/天の巻・地の巻(1977年、平凡社)』のビデオ版をつくろうという企画を立ち上げたんです。マキノさんは何といっても話芸が巧みで、その仕草や表情を見ているだけでも絵になる、まさに<生ける映画史>そのもののような伝説の人物でしたからね。ちょうど、その頃、湯布院映画祭がマキノ雅弘監督の特集を組むというんで、プロのビデオ・クルーを連れて、湯布院でのマキノさんを完全ドキュメントしたんです。弟子にあたる岡本喜八監督、澤井信一郎監督、鈴木則文監督、脚本家の笠原和夫さんという東京でも絶対に不可能と思えるような豪華メンバーが集い、僕がマキノ監督を含めて全員にインタビューもしています。結局、その後、会社がつぶれてしまい、マキノさんもお亡くなりになって、企画は頓挫してしまうんですが、先頃、『東映監督シリーズDVD_BOXマキノ雅弘・高倉健BOX(2006年、東映)』のなかに特典映像として一時間ほどに編集されたバージョンが入ったので、よかったなと思っています。
- 2007年01月19日
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