落語家 昔昔亭桃太郎師匠インタビュー(2)

話は変わりますが、落語家以外の道をお考えになったことはありますか?


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うん。当時、石原裕次郎に憧れていたから。本当は今でもああいうふうになりたかった。だけど背もあんなに高くない、顔もよくない、出身地も良くない。まあ、芸の道が自分に合うのか、と思うようになったから。やっぱ落語だよね。落語で正解だった。年取っても大丈夫。

普通の人は、師匠のようになかなか自分の才能を見つけるのは難しいですよね。

そうだよね。でも日芸の高田文夫氏や春風亭昇太の様に簡単に見つけちゃう人もいるんだよね。俺もこの年でやっと型が出来てきた。もう落語をやるという運命のもとに生まれたんだよね。でも長い道のりだ。

それでは、新作の魅力についてお聞かせ願えますか?

新作っていうのはわかりやすいから。俺は根は親切だから。誰にでもわかるような、ここにいる人全部にわかるような。古典の場合は、わかる人にしかわからないでしょ。頭の良い人はわかるけど。そういう落語家は自分が楽しんじゃうんだよね、芸を忘れて。自分が楽しんじゃって客を楽しませるのを忘れちゃうんだよ。俺の場合は、客もこっちも楽しんで、両方楽しいのがいいから新作もやる。わかりやすいのなら古典だってやる。みんなにわかってもらえるから。

中学校で、サッカーのワールドカップについての落語をされたとのことですが。

そう「夕刊フジ」にサッカーのコラムの連載を依頼されてね。ワールドカップなんて知らなかったよ。サッカーのことなんて全然知らないんだよ。こっちは知らないのにやってくれって頼まれた。だから「知らない」って言ったら「知らないから良いんです」と言われて。ようは、知ってる人が書いても、専門的なとこに突っ込んじゃうから面白くない。


落語家になりたい学生はどう思われますか?

なりたいと言っても、生まれつきのセンスがないと難しいよね。あと、始めは大きいネタじゃなくて小さいネタからやってくのが良い。大きいネタからだと、小さいネタをやるのがバカバカしくなっちゃうんだよね。落語家は会社勤めよりは、いい商売かもしれないね。定年もないしね。何でも努力次第だね。

桃太郎師匠のもとに、突然若い人が弟子入り志願することはありますか?

そうそう。でも生まれつき運を持っている奴もいるんだよ。人間としてのね。みんなに好かれる性格が備わっている。なんでも運…運…運だね。運6分、努力4分くらいじゃないかな。たとえばうちに入ってるA太郎っていうのは、入ってまだ半年にもならないんだけど、どこに連れて行っても気に入られるんだよ。背も180センチあって、ハンサムでね。ハンサムっていっても、いやらしいハンサムじゃないんだよ。それに大学時代、フットボールの選手だったから女にモテるんだけど、そんなことは喜ばしくないんだよね。ただ、とにかくどこ行っても好かれるんだ。ああいうのが、運を持っているというんだよ。
それに比べて俺なんかひねくれていたから「小生意気だ」って言われて損したね。やっぱりおとなしく素直にやってれば良かったと思うよ。
でもまあ今の俺の面白さや魅力は、入ったときにふてくされてたのが今になってみると良かったんじゃないかな。しかし実際、落語家になって食えるのは2割だね。昔の落語家の女房ってのはよく我慢したから、亭主なんとかするために女房も働いたりしてね。でも今の女は我慢なんかしないから。すごい離婚が多いよ。出てっちゃうんだよ。だからビンボーしていても、努力している姿を常に女房に見せていないといけないんだよね。

落語自体は、決して閉じられた芸能ではなく、触れる機会は多くあるのにあまり日常会話には出て来ないというのが不思議なのですが…

いや、だからやる人が時代遅れなんだよね。昔の…題材が職人だとか、貧乏、与太郎だなんていうもので。ナウくないんだよ。だから若い人で聞くって奴は、よっぽど偏屈な人でしょ。大体、落語好きには変わり者が多い。特に落語好きの男なんて女に縁のないようなのとかね。若くないような小汚いような、そういう人ばっかりだよ。散々モテて女にキャーキャー言われるような人は落語ききに来ないよ(笑)。いわゆる大劇場に行けないような人が来たりするよ…そういうような人だよね、来るのは。困ったもんだよ。

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