映画監督 中島貞夫インタビュー(6)

牛田: 終戦のときの記憶が中島監督の作品に反映されていますか?軍隊やじぶんが所属している組織から逃げていくこととか?



中島: ずらかるのは非常に上手よ(笑)。



牛田: 中島監督の作品逃げる人よくでてきますね。

中島: そうね。逃げるんですよ。



牛田: どうしてですか?



中島: 三十六計逃げるにしかず(笑)。例えば紋次郎なんかも結局は逃げきれないんだけど、逃げるために生きているんだよね。紋次郎のチャンバラのどこに特異性があるかっていうと、相手を倒すために闘っているんではなくて、自分が逃げるために闘っているんだよね。あれは「逃げのチャンバラ」って言うんだけどね。どうにも我慢ならないやつは叩き切るけど、そうじゃないときはいかにその場を逃げるかってね。



牛田: それは撮影所で身に付いたことですか?



中島: そうそう(笑)。いずれ逃げたってどっかでふん掴まるに決まっているんだよ。だから逃げきれっこないっていうのはあるんだけど、でも願望としては逃げきっちゃうていうのはいいよね。



牛田: その場合の逃げるどこかっていうのは想定されているんですか?



中島: それが見つからないんですよ。僕らが映画撮り出した頃、国外脱出願望っていうのがあって、ラストシーンをそこに持っていくって映画あったけど。それは違うなって。そんな夢みたいな逃げた先に何かがあって逃げるんじゃなくて、逃げた先にもどうせありゃしない。



牛田: 逃げ切れないことがわかっていて逃げる虚無感を抱え込んでいるんですか?



中島: 刑務所ものなんかやると所詮はそうなってしまう。
粋がったらあかんでっていうのもあるし、一方で粋がらなきゃあかんでってこともある。
映画は注文仕事と自分が作りたいものを作るという両面やらないといけない。自分の企画を通すためには、会社や今ではお金を出すプロデューサーとかの要請と同時に、その中でいかに自分のやりたいことをやるかっていう戦いだったんですよ。だから何本も企画でつぶれているしね。七転八倒した時期もあるしね。そういうなかでうまいことのっているときもあるし、ぶっつぶれて半年ぐらいふて寝しているときもあるしね、そういうこともみんな繰り返ししてきてるわけよ。割と楽にきているわけではないから逆にそういうなかで自分のつくりたいものを作りたいとおもうとね。それとの戦いですね。

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