書家 石坂雅彦 インタビュー(4)

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第四回 in 日芸


国内に話を戻しまして、書の勉強をほとんどしていない若者が自分を表現した書のようなものを道端やカフェなどに並べたりしていますが、ああいうものをご覧になってどう思われますか。

石坂 私は無論、筆や墨で表現することは面白いことだと思います。学校などの教育の場で書道の時間が昔より減っているので、今の若い人には上手い下手や良し悪しは抜きにして興味を持って表現するということを大いにやって欲しいです。実際おもしろいものもあるし、日本人の感覚を高めるのにも役立つんじゃないかな。だから本当は家庭に筆と墨があって、ちょっとしたときにすぐ使えるような環境があったら違ってくると思うんですがね。

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今は道具一式揃っている家庭はなかなかないですね。

石坂 我々が子供の頃は床の間に硯箱があって、中に小さい硯と筆が入っていて、いつでも祝儀袋なんかに書けるようになっていたんです。子供ながらに筆をとって遊んだりしましたよ。今は書家の家を除いて、そういう光景はなかなか見られない。だから環境を整えていくと、もっと若い人が筆を悪戯してくれるのかなと思います。

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先生は芸術学部の教職課程で書道を担当していただいているんですが、授業内で学生が自由に書く時間を設けたりしているんですか。

石坂 最後にそういう時間は設けます。最初に芸術学部に来たときに、ある先生にしっかりした字を書けるように教えてほしいと言われたんです。考えてみれば正しい筆遣いできちんと書けるということも意味がある。みなさんも小学生のときは、跳ねや右払いが難しかったでしょう。やって見せてはくれるんですが、筆をどこでどうしたら上手くいくということを誰も説明してくれない。勘だけでやると時間が掛かってしょうがない。そこで、その書き方は分析してみるとこういう具合になっている、ということを学生たちには教えています。一年間しかないんだからそういう技術的なことをどんどん身につけてもらって、筆の機能や線の特徴をよく理解してもらう。そこから先に何かおもしろいことをやろう、というのはその人の自由に任せています。


では先生の授業では原則的なことに重点を搾ってやってらっしゃるんですね。

石坂 はい。日芸で教えはじめて三年になりますが、最初は天下の日芸で一体どんな授業になるのか、もっと創作的なことをたくさんやらないといけないんじゃないか、と思ったんです。でも結構みんな熱心にやるんですよ。つまんないとか一切言わない。むしろ、学生の方からどんどんやってくる。珍しく暇にしていられない授業なんですよね(笑)。


日芸の学生は基本的に作業することが好きなんですよね。しかも技術的なことをわかりやすく教えてもらえるとなると、学生はどんどん吸収するから楽しくて仕方ないと思います。

石坂 興味を持って取り組んでくれるのが一番嬉しいです。最初はすごく心配したんですけれどね。はじめて来た年に授業を取っていた四年生の学生が、ある時「石坂先生の教室に通いたい」って言って茅ヶ崎までやってきたことがありました。その学生は卒業して一年目に天下の読売書法展に出して、入選もしたんですよ。


え! それは初耳です。文芸学科の学生ですか。

石坂 そうです。清水瞳さんっていう人。初めての出品でよもや入選しまいと思っていたら、通っちゃいましたね(笑)。

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