書家 石坂雅彦 インタビュー(3)
第三回 欧米から見た書
先生はご自宅に教室を持っていらっしゃるんですか。
石坂 自宅と、カルチャーでも教えてます。
最近、若い女性をターゲットにした書道教室もよく見かけますね。
石坂 カルチャーでは年配の女性が多いけどね(笑)。でも最近、本当に女性が多くなりましたね。女性の書家も二、三十年前より圧倒的に増えています。

書家としてデビューするには具体的にどういう道のりを辿るんですか。
石坂 今だと二つの方法があります。一つは展覧会でいい成績を収めてどんどん出世していくという方法。もう一つはまったく個人でやっていて、テレビなどに出て知名度を上げていく、という方法ですね。
最近テレビで若い人気書道家という方をよく見ますね。
石坂 なかなか売り込みが上手いなぁ、と感心します。でも本当に優秀な人はいませんね。そういう人はパフォーマンスとして人目を引くことが目的になっていて、作品の質そのものはそんなにいいもんじゃない。
以前テレビで、アメリカの広場で巨大な書を書いている書家の方を見たんですが、あれこそパフォーマンスが目的ですよね。
石坂 私の認識ではアメリカで成功した書家はまだ一人もいない。向こうに書家はいないから現代美術として書を見るんですが、なかなか興味を持ってもらえないらしいんですよ。コレクターといわれる人もいますが、そういった方は昔のいい作品をコレクションしてるんです。
以前、先生の作品がアメリカで売れたと伺ったんですが、日本と海外での評価の違いなどはありますか。
石坂 日本の場合、やはり日展や読展などの大きい展覧会の組織に入っていないとなかなか認められないんです。例えば文化勲章で考えれば、日展でそこそこの地位になり、文化功労者にならないとそういう話はこない。それ以外だと、海外ですごく評価されてノーベル賞をとったとかいうレベルになれば後から付いてくる。芸術方面ではノーベル賞に匹敵する賞がまだないからそういう人は出てきていないけれど、何とかビエンナーレとかいったものがもっと評価されてくると、国内じゃ全然だったけれど海外で評価されていきなり出てくるという人が増えるんじゃないかな。版画の池田満寿夫さんなんかそうですよね。
現代美術にはそういった逆輸入の例がたくさんありますね。
石坂 現代美術は逆に海外の方が発表の場が多いし、適切な批評家も見てくれる。書の場合、批評家がまずいないんです。
これから海外でどんどん書が受け入れられていくということはあるでしょうか。
石坂 基本的に欧米の人は漢字が読めないじゃないですか。だからどこまで……というのは疑問なんだけれど、確かに東洋的なものに興味を持っているということはありますね。だから字の良し悪しに関係なく人気が出る要素はある。欧米の人が書に見るおもしろさというのは、純粋に造形的な魅力ですよね。黒によってできる白とのバランス。だから視覚的な作品を作る人の方が、海外では認められやすいんじゃないかな。私の作品に白羽の矢を立てた人はニューヨークの日系二世の建築家なんですが、その人は数寄屋造りの家を造ったので、そこに入れる書を探していたそうです。そこで私の書が選ばれたというのは、古代文字の、絵にも似た造形のおもしろさに惹かれたんじゃないかと思います。それともう一つ、材料ですが、あの画仙紙という紙は東洋にしかないんです。西洋にはあんな風に滲んだりかすれたりする質の紙は今までなかったから、珍しいと思いますよ。だから現代美術で和紙を使っている人が欧米の方で最近いるみたいです。きっと墨なんかにも興味持っている人もいるんでしょうね。
- 2006年09月25日
コメント