作家 中沢けい インタビュー(5)

山下: 今回先生には、大学で創作コースの教鞭をとることについても聞いてみたいと思っていました。先生は、現在、法政大学の教授をされていますね。
中沢: 法政は2年時に、文芸、言語学研究、文学研究コースの中からゼミを選びます。文芸イコール小説家養成というわけではないんですよね。日芸はもうちょっと野心があるのかもしれないけど。
山下 最近はどの大学でも各国文学というよりも、文芸というのが増えていますね。
中沢: 近畿大学とか東海大学とか大阪芸術大学とかね。法政の文芸は今年は受験者数、増えてましたね。ちょうど私の頃の時代には、早稲田が文芸コースを作って、優秀な学生を出版社に売りこむまでやる、というのができて、その最初の卒業生が、見延典子さんですね。私が大学1年でデビューした同じ月に、早稲田を卒業した彼女も本を出したんです。その後、三石由起子さんが、早稲田の文芸の創作で『ダイアモンドは傷つかない』を出しています。
山下: 先生は政治経済学部ですよね。文芸は選ばなかったんですね。
中沢: おおっぴらには言えないけど、創作は習わなくてもね(笑)
山下: では先生自身が創作を教えるにあたって、何をモットーにしていますか?
中沢:私が最初に教えたのは、朝日カルチャーセンターです。そこにはいろいろな目的の人が来ていました。社員の人事管理をやっていた人もいて、気が付くと人事評価の文章しか書けなくなっていたんですって。定年後もそんな文章しか書けないんじゃ寂しいからって来てた人もいましたね。自分の一生を一度書いてみたい、っていう人もいたし。こんな方々がいるクラスを担当して、自分がどうやって書けるようになったか、ということをその手順で教えてみたんです。でも、書き方に関してはいろいろで、それぞれが自分のスタイルを決定していればアドバイスの仕様もあるけれど、逆に、自分が何を書きたいのか、まだ捕らえていない場合、とにかく書いてみて探していきましょう、というやり方でしたね。先生が修正をつけてやれば、アマチュアの賞なんかは、ぱっととれちゃったりするようなクラスもあったけれど、私はそういうふうにはやりませんでした。
山下: カルチャーセンターを経て、日芸、明治で非常勤を、そして法政では専任教授になられたんですね。
中沢:日芸の学科の方は17年度までで失礼させていただくことになったんですが、明治では源氏物語の講読もやっています。あれは物語のディティールが、読んでいてすごく面白いんです。田舎に住んでいて、いずれ宮使いをしたい、なんて思っている女の子が読んだらたまらないだろうなっていう部分がある。フランスなんかでも、戦と恋は文学の華ですね。やっぱり宮廷があった社会って、恋で戦するんですよね。みなさん武力でなく魅力でひきつけて、一大勢力を築き上げていく。
山下: 先生、是非、中沢けい版現代訳『源氏物語』を書いてください。本日は作家として、大学人として、貴重なお話を披露して頂き、どうもありがとうございました。
(2005年3月30日 目白・入り江にて)
- 2006年07月03日
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