作家 中沢けい インタビュー(4)

nakazawa_kei_banner.jpg

nakazawa002.jpg山下:  やはり先生は政治経済学部出身の方ですね。一方で、先生の作品には非常に女性的で感覚的なものが多く描かれていますよね。とくに私は「匂い」を多く感じます。中沢けい文学は「匂い」の文学だと思ったのですが・・・


中沢 小説というのは、目に見えるものを書くと、映像に負ける。耳に聞こえるものを書くと、音楽に負ける。でも、匂いだけは他のジャンルに負けない。あと、気配とか、雰囲気ね。人間の五感のうち、一番科学的な追求がされてないのが匂いですよね。

山下: 先生の作品では、女性というものが描かれるときに、「匂い」がなまなましく出てくる気がするんです。変な話、女性にしかできない出産のときに、匂いはするんですか。


中沢: 出血も多いし、胎盤も匂うし・・・。そうそう、赤ちゃんって、男の子が生まれた場合はやっぱり男臭いのよ。女の子は女臭い。それは不思議ですね。とくに新生児はよく匂います。おっぱいの匂いと大小便の匂いのほかに、身体から分泌される汗の匂い。


山下:  そういえば、最近、中沢先生が書かれているものは子供が主人公で、従来の傾向と変わってきていますね。


中沢: うちの子供が大学を出て、一区切りついたことが大きいですね。子供は二人いて、大学四年と五年のときに生みました。卒業式で袴を着ようと思ったら、妊娠一ヶ月で前がしまらなかった(笑)。こういうことの他にも、自分で子供を育てていると、面白いことがいっぱいあったし、40才を過ぎると、自分の子供時代のことも思い出すんです。書くことって、コンクリ入れて固めるようなところがあって、自分の書いたもので固めてしまうところがある。だから、若い頃は書けませんでした。自分の子供時代を殺してしまうようで。その点、40才を過ぎるとみんな過去だから大丈夫。作家って、30才代で出てくる人が多いでしょ。それは子供時代が終わっている、というのが一つの理由ですね。ふり返れる、一つの小さな世界の形成が、終わっているということです。時間的な貯蓄のバランスがちょうどいいんですよ。時間の蓄積が必要な文章というものもあるんです。例えば歴史小説なんかで、40~50才で出てくる人っていうのは、やっぱり、歴史的時間の長さをイメージしやすいからですよね。「ああ、100年は私の人生の倍なのか」って具合に。

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントする

(文化会議 にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

comment form