作家 群ようこ インタビュー(7)
山下 こうしてお話を聞いてると、群さんの口調がエッセイの文体そのままで、感動してます。話も面白いし。はなし家さんみたいですね。
群 群さんは小説より話の方がおもしろいね、なんて言われたこともありました。
山下 私はどちらかというと群さんの小説のファンなんですよ。群さんの小説にはなんというか、さーっとのびた水平線が見える感じがするんです。それから、なんと言っても、おっしゃっていることと書いてることが合致していて、独特の群ようこ文体があるのがいいです。
群 文章を練る人っているでしょ。私、練れないんですよ。わりとそのときそのときのリズムで書いてます。瞬間芸。体から出てくるっていうのかな。運動神経みたいなものですね。文章が美しい人っているでしょう、練って練って、そういうの駄目なのよね。練ってるうちにあきちゃうの。もうめんどくさくなっちゃうの。でもね、子供の頃から本読んでて、そういうのが自分の書いてるのと違うので自分のは小説じゃないんじゃないかと思うときがある。だから、どっちかっていうと小説って苦手かな。私はばんばん直球しか投げないから、いわゆる美しい日本語書ける人ってうらやましいですね。私、そういうテクニックないから。
山下 全般的に、男性の方が、文章とかいろいろな意味で、美学のようなものを求める気がしますが。
群 うん、そうね、神経質。それから、めめしい。女の人の方がみんなざっくばらんで豪快。女の作家さんと話をするときは、みんな、ばんばんばんばん言いたい放題。気持ちのいい人ばっかり。男の人はねー、難しいかも。
山下 ねちっこくて、まわりくどくて、何言ってんだかわからない男の人っていますよね。
群 ぐちぐちぐちぐち、うだうだうだうだ、何か、言いたいのよねー。男の人はめんどくさいからねー。女の人の方が、ぱきぱき、しゃきしゃきしてるかも。
山下 群さん、最高です。日芸で講演してほしいです。
群 人に教えるなんてできませんよー。どうでもいいことは山ほど話すんですけどね。私ね、羊の皮をかぶった狼って言われるんです。黙ってりゃわかんないけど、一言言っちゃうとね、狼がばれる。
山下 その狼の部分、毒の部分がいいんです。
群 初対面の人と会うと全然わかんないのよね。迫力のある大柄な人を想像するらしい。私実際は背が低いんだけど、文章のイメージは大きな人みたい。がんがん言ってるから、でかい人と思われるみたいですね。
山下 そういえば、女の作家さんと言えば、群さんは、樋口一葉、木村曙、森茉莉、林芙美子などの人物エッセイを書いていらっしゃいますね。女性作家に興味がおありなんですか。
群 男性作家に興味ないですね。でも梶井基次郎さんは手がきれいなんですよねー。写真観たときはびっくりしたけど。どちらかというと破滅型とか夭折した人とか、おちぶれて死んだとかいう人に興味があります。成功した人には全然興味がないですね。夏目漱石とかね。
山下 今後はどのような女性作家を取り上げるんですか。
群 平林たい子なんですけど、まいっちゃいました。予想している人とちょっと違ったので。やめるわけにもいかず・・・・。面白い人なんだけど、平林さんには自分との共通点が見出せなくて、やってて非常に難しいところがありました。平林さん、基本的にうそつきなところがあって、そのときによってうまく自分の立場をくずさないように、うそでかためるところがあるので、わりとその人間の根本の本質のところでは自分と違うような気がしたんです。だから距離の取り方がすごく難しかった。林芙美子の場合は、小学校4年生のときにはじめて読んで、細かいことわかんないから憧れの人だった。女の人が結婚しなくて、こういうふうに生きててもいいんだってのがわかったんです。でも小学校4年生だから彼女の恋愛の部分はわからなかった。ミカン箱の上で一生懸命原稿書いて、明るく、お金はないけど女一人がんばってるっていう印象でした。それが、だんだん年とって読むと、なんだ、結婚したがってんじゃんってわかる。するとあるとき一時期嫌いになっちゃったんです。なりあがり根性のいじましさ、というか、そんなに男に頼らなくてもいいじゃないというか。でも今くらいの年になるとかわいいのよね。時代時代で読み方、印象って変わるじゃないですか。林芙美子はすべてひっくるめてチャーミングな人だと思います。でも平林さんはちょっと違った印象が・・・・・ 豪快な感じの肝っ玉母さん風だったのが、ちょっと意地が悪くて、自分の立場を守るというか、人を試す・・・そういうのがちょっと嫌です。
山下 群さんの新境地、女性作家評伝エッセイ、今後も楽しみにしております。
では最後に日芸の学生に一言、お願いします。
群 本をたくさん読みましょう。
山下 ありがとうございました。
(2006年3月7日 目白 カフェ・アコリットにて
2006年3月27日 新宿 椿屋珈琲店にて)
- 2006年04月20日
コメント
ルチャーナと申しますが、イタリアでは群れようこについて研究しています。
特に、群れようこのあたしが帰る家と言う小説をイタリア語に翻訳しています。
群れようこと連絡したいので、このサイトのおかげで、群れようこと連絡できれば、うれしいです。
よろしくお願いします。
ルチャーナ
「群ようこインタビュー」を読んで頂きありがとうございました。
イタリアでも群ようこ文学が受容されていること、とても興味深く感じます。
ただ、残念ながら、「文化会議」ではインタビューに答えてくださった文化人の方々の個人的紹介は一切行っておりません。その旨、ご理解頂けますよう、よろしくお願いいたします。
文化会議