作家 中沢けい インタビュー(1)

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インタビュアー 牛田あや美・山下聖美



インタビューの前に 山下聖美


 中沢けい氏にはじめて会った、というかすれ違ったのは、10年前の日芸・江古田校舎文芸棟、階段のところであった。当時、外部の大学から日芸の大学院に来たばかりであった私は、同じく、日芸歴まだ数ヶ月の院の友人とともに中沢けい氏を〈発見〉し、「中沢けいだ!」とミーハー的眼差しを送ったのであった。
 当時、中沢けい氏は、学科の授業を担当されていたはずだ。最近では大学院の授業も受け持つようになられているが、私たちの時代、中沢氏はまだ学科の授業だけを担当する名物教員であったのだ。「さすが日芸だね、有名人がいるよ。」とささやきあったことがなつかしく思い出される。

 

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作家 中沢けい インタビュー(2)

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山下: 十代の作家が芥川賞をとったりと、小説家の低年齢化が話題になっていますが、そもそも中沢先生も十代で鮮烈にデビューなされています。まずはデビュー作『海を感じる時』についてお聞きしたいです。私は「社会から葬られたくない。」という台詞がとても印象に残っています。あそこに、新しいヒロインの誕生が、「中沢けい」という作家のデビューと重なってイメージされるんです。

中沢: 『海を感じる時』は、初めてまとまりをつけて書いた作品です。125枚ね。私小説というわけではないけれど、モデルはいました。それから自分の経験も交えて書きました。あの作品が賞を取ってから、最初の半年はインタビューや取材をこなすのが大変でしたね。当時は、昼は事務所に勤めていて、夜、大学に通うという生活をしていて、その狭間によく、お茶ノ水の喫茶店で記者を待たせておいて、終電に飛び乗って、銭湯が閉まる前に入る、という暮らしでした。とにかく体力勝負で、考えてるひまなどなかったですね。そういえば、あまりに忙しかったので、大学を中退したっていう噂を流されてしまって、むっとしました。

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作家 中沢けい インタビュー(3)

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nakaza.jpg山下: 大学一年でデビューされて、まだ弟さんは高校に在学していらっしゃいますもんね。それにしても、中沢先生の作品からは、70年代から80年代へかけての、リアルな、独特の時代感覚を感じます。先生の歩んできた〈時代〉についてお聞きしたいです。
中沢: 私がデビューしたのは、かぐや姫の「神田川」が流行ったちょっと後ですね。ちなみに小学校から中学校にかけて、隣町の学区へバス通学していたので、バスを待つ間に、駅前の本屋で『サザエさん』全巻を立ち読みしてました。『同棲時代』なんてマンガも流行っていたんだけど、それを立ち読みするのはちょっと具合が悪かった・・・(笑) 
 80年代になっても、83年頃まではまだ古い日本が比較的残っていたんだけれど、85年くらいから急激にバブルになっていくんですよね。私が大学出た頃の83年あたりは、女子学生土砂降りっていって、まだ男女雇用機会均等法もなく、さらに構造不況で、4年生大学卒の女子学生はどこにも行けない年だった。経済を構造転換させるために、政策的にバブルへ誘導したんですね。結果的に失敗して、その後、長い間不良債権を処理しながら、本当の意味での転換を図ってきた。ようやくこの1、2年に株価が回復してきたのね。1985年~2005年の苦闘は大変だったんです、日本は。
牛田: まさに中沢先生が作家として歩んできた時代ですね。

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作家 中沢けい インタビュー(4)

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nakazawa002.jpg山下:  やはり先生は政治経済学部出身の方ですね。一方で、先生の作品には非常に女性的で感覚的なものが多く描かれていますよね。とくに私は「匂い」を多く感じます。中沢けい文学は「匂い」の文学だと思ったのですが・・・


中沢 小説というのは、目に見えるものを書くと、映像に負ける。耳に聞こえるものを書くと、音楽に負ける。でも、匂いだけは他のジャンルに負けない。あと、気配とか、雰囲気ね。人間の五感のうち、一番科学的な追求がされてないのが匂いですよね。

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作家 中沢けい インタビュー(5)

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naka.jpg山下: 今回先生には、大学で創作コースの教鞭をとることについても聞いてみたいと思っていました。先生は、現在、法政大学の教授をされていますね。 

中沢: 法政は2年時に、文芸、言語学研究、文学研究コースの中からゼミを選びます。文芸イコール小説家養成というわけではないんですよね。日芸はもうちょっと野心があるのかもしれないけど。

山下 最近はどの大学でも各国文学というよりも、文芸というのが増えていますね。

中沢: 近畿大学とか東海大学とか大阪芸術大学とかね。法政の文芸は今年は受験者数、増えてましたね。ちょうど私の頃の時代には、早稲田が文芸コースを作って、優秀な学生を出版社に売りこむまでやる、というのができて、その最初の卒業生が、見延典子さんですね。私が大学1年でデビューした同じ月に、早稲田を卒業した彼女も本を出したんです。その後、三石由起子さんが、早稲田の文芸の創作で『ダイアモンドは傷つかない』を出しています。

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