新聞記者・芥川喜好に聞く―激動の時代を生きて―(1)

akutagawa_kiyoshi.jpg


―インタビューの前に。
新聞という巨大なメディアの世界を長年歩いてこられた氏は、一体どのような人物なのか。新聞というメディアの魅力はどういったところにあるのだろうか。一人暮らしをしてから、新聞をほとんど読まなくなった私が、読売新聞の編集委員である芥川先生にお話を伺える機会を得た。


akutagawa001.jpg


『芥川喜好』プロフィール
(あくたがわ きよし)1948年生。早稲田大学文学部美術史学科卒。読売新聞美術記者として美術展評、日曜版美術連載企画などを担当。日曜版は通算22年、1005回を数えた。うち11年に及んだ連載「日本の四季」で1992年度日本記者クラブ賞受賞。現在、読売新聞編集委員、日本記者クラブ会員。早稲田大学講師、社会経済生産性本部社会政策特別委員なども務めた。著書に『画家たちの四季』(読売新聞社)『「名画再読」美術館』(小学館)など。


新聞記者・芥川喜好に聞く―激動の時代を生きて―(2)

akutagawa_kiyoshi.jpg

2年の途中で、美術史がやりたくなったんですね。なぜか。


―今日はよろしくお願いします。では、早速ですが、大学時代はどんなことをしてらしたんですか?
芥川 我々の学生時代は、いわゆる70年安保闘争、大学紛争があった時代でしたね。世の中に対して異議申し立てをするというか、既成の秩序に歯向かっていくという雰囲気がありました。それで、大学には学生運動の組織が乱立しているわけです。特に早稲田の場合は『学生運動のデパート』と言われていましたから。その中で私は現代詩のサークルに入っていて、そこで3年間世の中を糾弾するような詩を書いていました。それを、自分でガリ版印刷をして『アピールのための詩を書きました!読んでください!』なんて言いながら、早稲田の正門のところで配ったりして。その中身は『機動隊を殲滅するための15章』とか、そんなタイトルの詩が書いてあったりするんです(笑)

akutagawa002.jpg


―それはまた過激な詩ですね(笑)
芥川 過激でした(笑)それなりに過激な世の中でしたね。詩を書いているというよりは、世の中の動きに関わりながら、アピールしていたのだと思います。部室にはヘルメットが置いてあって、結構デモ行進なんかにも参加したりもしました。ただし、セクトには所属していないので、ガチガチの運動家という感じではなかったです。学科の勉強はほとんどしていません。ましてマスコミに就職するための勉強は何もやっていないです。

―そんな過激な学生時代を送ってこられた先生ですが(笑)、お母様はどんな方でらしたんですか?
芥川 厳しい人でしたね。スパルタ式ですよ。私の父親は銀行勤めで、銀行勤めというのは転勤で全国転々とするのです。私も学校が三つ変わっているのですが、そうすると、子供強く鍛えとかないといけないということで、厳しく育てられましたね。いわゆる今の教育ママのはしりなんじゃないかな。私は音楽をやらせれたり、わりと何でもやらされました。

新聞記者・芥川喜好に聞く―激動の時代を生きて―(3)

芥川喜好



―では、昔から美術に関係する、例えば絵を描いてらしたとかそういうのはあったんですか?
芥川 まったくやっていないです。美術とは全く縁がなかった。いや、全くと言っては御幣があるかな。大学の学科は美術史というところでしたから、私は。大学に入った時は、ロシア文学を専攻していたのですが、2年の途中で美術史がやりたくなったのです、なぜか。

akutagawa004.jpg


―なぜか、ですか。それまでは美術館に通いつめたりなどはしていたのですか?
芥川 まったくないです。それが突然なぜか美術史がやりたくなったのです、これが。ただ、今思うとですが、美術史というのはどうにもならない学問、つまり世の中の役に立たないような気がしていて。語学などは役に立つ学問ですが、それよりもどうにもならない美術史の方がいいとなったのだと思います。でも突き詰めて考えると、どうして美術史だったのかはわからないですね。ただ私が美術史に具体的な興味があったとすれば安藤更生さんという日本のミイラの研究をしている人がいて、その先生が美術史にいたのです。私は日本のミイラに興味があったので、その人に学問を習いたかったということはあります。どちらにしても世の中の役に立たたないことをやりたかったんじゃないですかね(笑)


新聞記者・芥川喜好に聞く―激動の時代を生きて―(3)の続きを読む

新聞記者・芥川喜好に聞く―激動の時代を生きて―(4)

芥川喜好


―今のお話からすると最初から新聞社に入りたいという感じではなかったようですが、どうして読売新聞に就職しようと思われたのでしょう?
芥川 銀座をブラブラしている時に、読売新聞で定期採用者募集中と書いてあって。願書を配布していたのです。聞くと学校推薦も要らないというので、もらって帰えりました。それで、願書を出したというそれだけの話で。志もなにもなかったですね(笑)

akutagawa003.jpg


―では、タイミングが合ったという感じですか?
芥川 そうだね。きっと、タイミングが合ったのでしょうね。世の中半分以上はタイミングですよ(笑)何のバックもなくて、コネクションもなくて合格できましたから。

新聞記者・芥川喜好に聞く―激動の時代を生きて―(4)の続きを読む